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フランス中世建築事典 第1巻 Kindle版
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フランス中世建築事典 第1巻 Kindle版 - 日本語に翻訳された類書がない。訳者による注記や解説が充実している。内容をテーマ別に独自に編集し直している。段落分けや小見出しにより読みやすさが向上している。原著概要:19世紀のフランスの著名な建築家・建築理論家であるヴィオレ=ル=デュク(1814-79年)の『11-16世紀フランス建築理論的辞典』DICTIONNAIRE RAISONNÉ DE L’ARCHITECTURE FRANÇAISE DU XI AU XVI SIÈCLEの翻訳の第1弾である。原著は10巻からなり、最後の第10巻は索引である。1巻あたり平均約520ページ、全巻で4,700ページ以上ある百科事典に匹敵する書物である。この邦訳書は原著の構成、つまり見出し語の配置を変え編集し直したものであり、題名は『フランス中世建築事典』とした。翻訳の意義:原著は、フランス伝統の啓蒙思想に根ざし、知識を尊ぶ一般読者をつねに想定しながら、実務経験豊かな建築家によって書かれた、客観的・科学的・理論的書物である。たしかに理論として、学説として、議論の余地はあるとしても、その独特の魅力は、何といっても、各項目ごとに挿入された多数の図や絵である。本文の内容を的確に視覚化して記述を補完する配置図、平面図、立面図、断面図、透視図、断面透視図、詳細図などの製図図面はもちろんのこと、明快な鳥観図や眺望図がさらに建築の特徴や美しさをいまなお鮮やかに伝えている。図版それだけでも鑑賞に値するといえる。現に、ネット上でもヴィオレ=ル=デュクの著書からコピーされた図版が今なお流通している。しかしながら、これほどの名著にもかかわらず、フランス語を理解できたとしても、一般の読者にかぎらず専門家にとっても、9巻もの重い「事典」をアルファベット順に読んでいくには忍耐力が必要である。現在、幸いにも、さまざまな版の原著がそのままスキャンされたり、デジタル化されたりして公開されており、電子図書として無料で閲覧やダウンロードが可能になっている。このようなアクセスの利便性はここ数十年で数百、いや数千倍は向上したであろう。しかし言語の障壁は依然として立ちはだかる。この本は英語やドイツ語で一部の項目が翻訳されてはいるが、いまだにどの言語でも全巻が翻訳されていないのである。そこで、訳者は、少なくとも日本語を解する読者に、原著へのアクセスを容易にしたいと思い立ち、翻訳して電子図書として出版することを決意した(もちろん訳者自身が精読したいからでもあるが)。とはいえ、全巻翻訳という目標ははるか彼方で、到達は予測できないので、リアルタイムで翻訳作業を小出しに発表することにした。邦訳書の構成:まず、できるだけ読者にとって読みやすいように見出し語を並べ替えて日本語に移していくことにする。いわゆる編訳の作業である。ここでの読みやすさは、見出し語を概念ないしカテゴリーごとにまとめ、基本的なものから複雑なものへ、様式上重要なものから二次的なものへ、構造的なものから装飾的なものへ、建築から部材や彫刻、文様などの細部へ、宗教的なものから世俗的なものへ、見出し語の再序列を行うことにする。いわば配置図から始まり平面図、立面図、断面図、詳細図へ図面呈示が推移するように。第1巻は、とりあえず、原著第1巻から宗教建築、アバクス、アプス、アーチの各項目の日本語訳を収録している。原著全体からみれば、まだ3%にすぎない。次の第2巻には、「建築」の項の残りの小項目やヴォールトの項などを含める予定である。ヴィオレ=ル=デュク:ヴィオレ=ル=デュクは、『カルメン』の作者として有名なプロスペル・メリメが歴史的記念物監督官の任についていたとき、かれの部下として多くの荒廃した中世建造物の修復を手がけ、歴史的記念物の保存に大きな足跡を残した人だが、かれにたいする評価の結びの言葉はいつも、「だが、かれの修復は議論の的になっている」である。ナポレオン三世の離宮として使われたピエールフォン城の修復では―そこだけではないが―かれは調子に乗りすぎたかもしれない。これは修復を通り越して、恣意的な復元だ、まがい物でフェイクだ、と非難されても仕方がない。しかしそこにはガウディの影が見え隠れするし、ディズニーランドの萌芽が目につく。興味をそそられるか、興醒めするか。プルーストは、『失われた時を求めて』の「スワンの恋」の章のなかで、主人公のスワンに、ヴィオレ=ル=デュクの修復の新作、まさにピエールフォン城を仲間と連れ立って見に行く意中の女性オデットにたいして、自分の方がよっぽど本物の中世建築を知っているのに…と呪詛の言葉を独白させている。今となってみれば、つまり時間のパースペクティヴのなかで振り返って見れば、わたしたちは、ヴィオレ=ル=デュクもかれの失われた時を求めていたのではないかと述懐することが許されよう。第一次世界大戦で被弾したランス大聖堂を再び見出すことができることを、わたしたちはヴィオレ=ル=デュクの後継者たちに感謝しなければならないのだから。 原著解題:邦訳書の題名の各語を説明することで、原著の特徴の説明に代える。(1)フランス:中世のフランスというより、19世紀のフランスの領土が前提とされている。(2)中世:11世紀から16世紀という時代は、ヨーロッパの造形芸術の歴史の流れからいえば、ロマネスクからゴシックを経てルネサンスまでを含むが、ここで主題となるのは中世、それもゴシック芸術である。(3)建築:もっとも広い意味にとらえられた建築である。複数の建物からなる城塞や修道院といった施設、城や教会堂や住宅などの個別の建物、彫像、ステンドグラス、文様、紋章などの装飾や建築の細部、厨房や下水などの建物のなかの設備、甲冑、武器、錠前などの道具、服装や髪形などの服飾、こうしたものすべてにおよぶので、造形芸術と工芸全般を含む。(4)事典:建築に関して、19世紀当時あるいはそれ以前の世紀に使用された用語を収録した辞書ではなく、基本的には原著執筆当時に現用されていた用語を概念やカテゴリー別にアルファベット順に配列し解説した、辞典というよりむしろ事典である。書名のなかのraisonné(理論的、分析的)という語がこの事典の性格を表している。

de 黒岩俊介
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